ぱっと振り返ったあなたが、私をみつけて満面の笑みを浮かべたこと。
電車を見かけるたびの嬉しそうな笑顔に、帰るタイミングを逃したこと。
電車なんて……と思っていたのに、電車の名前も、キャラクターも。
いつの間にか詳しくなっていたこと。
珍しい電車を見るたびに、あの笑顔見たさにとった写真。
たくさん買い込んだ図鑑や絵本。
今でも、電車を見るたびに写真撮ろうかな、なんて思ってしまうけれど。
いつの間にか、ぷくぷくしていた手は、すらっとした指先になり。
靴の大きさも、もう同じ。
床に寝そべってみていた電車のおもちゃは、奥底に眠ってる。
もう写真って感じじゃないよね……
そう思ってスマホをそっとしまう。
家についたとたんに聞こえてくる
「今日のご飯なに？」
いつもの風景にほっとする。
あなたの後ろで、あなたが振り返るのを楽しみにしていた私は、もういないけれど。
「今日のご飯なに？」に力をもらえる私がいる。
一日一日流れて、一日一日変わっていく。
今までも、今も、これからも。
嬉しさも楽しさも、悲しさもやるせなさも、切なさも。
流れていく日々の中で、誰かのことが頭に浮かぶこと。
そんな瞬間があることを、 幸せ と呼ぶのかもしれない。
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